東京藝術大学 2021年度 月曜日5限目
   教員名:Hermann Gottschewski
   連絡先:gottschewskiアットfusehime.c.u-tokyo.ac.jp
   科目名:西洋音楽演奏史
   テーマ:西洋音楽の演奏解釈史I-録音以前(夏)、西洋音楽の演奏解釈史II−録音時代(冬)

授業の概要
主な内容

各週の講義の内容と資料(順次にアップする)


04月12日

  • ガイダンス・問題提起


  • 04月19日

  • 音楽史の中で見るベートーフェンと「演奏解釈」

  • 授業資料 PDF ワード(docx)
    関連リンク ベートーフェンの4番のピアノソナタの楽譜
          同時代のピアノを使った録音

          ヴェーゲラーとリースの『伝記ノート』
          シンドラーの『ベートーフェンの生涯』
          チェルニーのピアノ教則本作品500(同時代のフランス語版・英語版も)
          A.B.マルクスのベートーフェン伝記第一巻(第三版、1875年)
          A.B.マルクスの「ベートーフェンのピアノ作品の演奏への導入」(英訳も)
          W.v.レンツの「ベートーフェン。芸術についての研究」
          G.ノッテボーム『ベートーフェンに関する論文集』
          G.ノッテボーム『ベートーフェンに関する第二論文集』

          以下は授業で使う引用部分
          チェルニーのピアノ教則本作品500第四巻より
          マルクスのベートーフェン伝記より
          マルクスの演奏指導より
          レンツのベートーフェン芸術論より
          ノッテボームの第二ベートーフェニャーナより


    04月26日

    授業資料 (Schindler, ベートーフェンの演奏について、ドイツ語) (日本語、pdf、注意:25MB)
       註 ドイツ語と日本語を並べて勉強できるために、ドイツ語の資料には日本語訳のページ数、日本語訳にはドイツ語の原文のページ数を記入しました。

    05月10日

    関連ヴィデオ シンドラーの演奏論について(第10番のピアノソナタの第一楽章を中心に)
    関連楽譜   ゴチェフスキがシンダラーの演奏法についてのコメントを普通の演奏記号に変えて記入した楽譜


    05月17日 夏学期のレポートの主題提出(書面で:お名前、お名前の読み、学籍番号、主題、短い説明(二、三行で結構です)。この段階では考慮中の二、三の主題を出しても大丈夫です。)

       註 夏学期のレポートのテーマを録音以外の文献を中心に考えてください。
         例 演奏を美学的に扱う理論書・哲学書
           演奏や演奏法について具体的に触れる書物や雑誌記事
           ピアノ教則本、ヴァイオリン教則本等
           演奏者による楽譜のエディッション
           教師、生徒、指揮者等による楽楽譜への書き込み
           演奏者や作曲家の書簡
           絵画や風刺画等
       補足としては必要に応じて録音資料や録画資料を使用してもかまいません。
       これからは以下のスケジュールで進みたいと思います。
       6月14日:夏学期のレポートの進行状況提出(400字程度、この段階では一つの主題に絞ってください。研究方法にも触れてください。)
       7月12日:夏学期のレポートの口述発表(5分程度、そこでは文献と方法に触れて下さい)、他の学生のフィードバックを得る
       9月30日:レポート提出(原則的にメールによってファイルとして提出)。分量は本文A4四枚程度(註を含む、譜例、文献目録等を含まない)


    05月24日

  • 19世紀のバッハ受容と演奏史 その一:平均律の出版譜から見る19世紀の「素人」のバッハ演奏(第1巻第12番のフーガを事例に)

  • 参考録音 チェルニー時代のピアノで演奏されるバッハ『平均律クラヴィーア曲集』のイメージ(youtube)
    楽譜資料 (様々な楽譜はimslp.orgにありますが、以下はそこから選択・抜粋したもの。)
         バッハの自筆譜 この自筆譜は19世紀に知られていなかった可能性がある。他の18世紀の写本は上記のimslp.orgを参照。
         バッハ協会のエディッション 19世紀のバッハ全集(学術的出版物、この巻は1866年出版)
         いわゆる「チェルニー版」 チェルニー版は1837年(?)に出版されたが、こちらはロイチュによる改訂版(1863出版?)。
          演奏法に関わる記号は初版にほぼ同じだと思われる。
         いわゆる「ブゾーニ版」 ブゾーニ版の初版は1894年。ここ出しているのは1916年(?)の再版。


    05月31日

  • 19世紀のバッハ受容と演奏史 その二:オルガン作品のピアノ編曲から見る19世紀の「ヴィルトゥオーソ」のバッハ演奏

  •      19世紀で「バッハの長男ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのオルガン協奏曲イ短調」と思われた作品
         (実際にはヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲をヨハン・ゼバスティアン・バッハがオルガンのために編曲した作品。
          ただしこの事実は1911年に初めて証明された。)
         ヴィヴァルディのオリジナル(1711年出版) 初版(パート譜) スコア(Urtextではない現代版) 推薦録音
         J.S.バッハのオリジナル(ヴァイマル時代作曲) 自筆譜 バッハ没後の初版、作者はW. Fr. Bachとして誤記(1844年) 現代の楽譜の一例 推薦録音
         19世紀のピアノ編曲 楽譜 連弾 (Plato, 1858) 同上(スコア) ピアノソロ (Golde, 1865?) 人気のStradal版 二台のピアノ (Stradal) Murdoch版 (1927?)
                   録音 Plato版(Finaleの自動再生、無修正) Stradal版による演奏(Alfred Cortot)(ただし一部は自己流に変更) Murdoch版による演奏
                   Stradal版の序文の和訳
                   VivaldiからBachへ、BachからPlatoの連弾版へ(楽譜の比較)
                   Vivaldi, Bachと四つのピアノヴァージョンの変化


    06月14日

  • 19世紀のバッハ受容と演奏史 その三:19世紀後半のオルガン作品の演奏の変化。前奏曲とフーガロ短調(BWV 544)を事例に

  • 楽譜資料 (一部はimslp.orgから選択・抜粋したもの。)
         バッハの自筆譜
         バッハ協会のエディッション 19世紀のバッハ全集(学術的出版物、この巻は1867年出版)
         Karl Straubeのエディッション J.S. Bach Orgelwerke Bd. II (Peters, 1913年出版)より
         新バッハ全集によるのエディッション
    参考録音 Ton Koopman, youtube(バッハ時代のオルガンで、1994の演奏)   またはnaxosmusiclibrary
         Elske te Lindert(バッハ時代のオルガンで、インターヴュー付)
         Michel Chapuisの演奏、楽譜付き(ただし音程が全音下げられている!!)   比較のために同一の録音をnaxosmusiclibraryで聴いてください
         Chapuisも上記の録音と同じくバッハ時代のオルガンで演奏していますが、演奏様式は今の「古楽器演奏様式」と違って、20世紀半ばの演奏様式だと思います(ゴチェフスキの意見)
         ベルリン大聖堂のSauerオルガン(1905)で、Karl Straubeのエディッションを使った、Balázs Szabóにより演奏
         同じくStraubeのエディッションによる演奏(Dean Billmeyer、同じくSauerのオルガンで、naxosmusiclibrary)
         授業で聴く録音の出版情報
         Straubeのバッハ解釈とその歴史背景について
            (上記の論文はBalázs Zsolt Szabó: Interpretationsfragen im Orgelwerk Max Regers im Lichte der von Karl Straube begründeten Tradition, Diss. Utrecht 2015, の第八章)


    06月28日

  • R. ヴァーグナーと古典音楽の演奏(1869〜70年の著作「指揮について」を中心に)

  • 歴史資料 (A) Neue Zeitschrift für Musik (『新音楽雑誌』)に1869年11月26日から1870年1月21日まで連載された初出論文
         (B) 1870に単著として出版された『指揮について』    同上、(C)のページ数入り(主にこれを授業で使う)
         (C) 日本語訳(パスワードを授業で案内する)    同上、(B)のページ数入り
         パスワードが分からない方はゴチェフスキにメールをください。


    10月11日

  • 冬学期の問題提起

  •      授業資料(PDF)   同(docx)


    10月18日

  • ピアノロール/ロールピアノの時代(1)

  •      授業資料(PDF)   同(docx)


    10月28日

  • ピアノロール/ロールピアノの時代(2)

  •      player pianoの文化を伝える軽音楽(1)Welte Mignonで発売された純粋機械音楽(つまり、演奏記録を含まない制作)44  45  46
         player pianoの文化を伝える軽音楽(2)Welte Mignonで発売された部分機械音楽(つまり、演奏記録をベースにし、編集で多くの音符を足したもの)42  43
         上記のロールについての書誌情報(「演奏者」は全て偽名と思われ、実はHans Haaßが演奏と編集を行ったと思われる)
         Hupfeld(Welteと別の会社)のピアノロール。クレシャンドとデクレシェンドがロールに描かれた線に従って手動
         Welte Mignonのピアノロール。クレシャンドとデクレシェンドは自動
          注 上記のAdam-Bénardの記録は1904年に行われ、Welte Mignonで最初で記録され、発表されたもの(他のピアニストは全て1905年以後)
            このヴィデオの中の三番目のロールに1904年6月21日と書かれているのは記録の日付です。授業では五番目のロールを聴く。


    11月01日

  • ピアノロール/ロールピアノの時代(3):大ピアニストたちの歴史的な演奏記録の資料的価値と信憑性

  •      Carl Reinecke (1824-1910)のシューマン演奏(1905年1月記録、youtube)楽譜
               同上、別の再生
         比較のため Ignaz Paderewski (1860-1941, 1914のレコード)
               Harold Bauer (1873-1951, 1935のレコード)
               Josef Hofmann (1876-1957, 1912のレコード)
               Ossip Gabrilowitsch (1878-1936, 1924のレコード)
               Wilhelm Backhaus(1884-1969, 1969 Live, 最後の演奏会の最後のアンコールとして)
               Arthur Rubinstein (1887-1982, 1961 Live)
               Svjatoslav Richter (1915-1997, 1956 Studio)
               Martha Argerich (*1941, 1978/79 Live)
               Seong-Jin Cho (*1994, 2018 Live)

         8日補足  同一のピアニスト・作品が複数のメディアに記録された事例:サン=サーンス自作自演のValse mignonne op. 104
               1904年のレコード
               1905年のピアノロール(Welte-Mignon)
               1919年のレコード
               1914の無声映画、1919のレコードにスピード合わせ

    11月08日

  • ピアノロール/ロールピアノの時代(4):明らかに「手入れ」が見られるロール

  •      参照:ゴチェフスキ Die Interpretation als Kunstwerk, Laaber 1996, S. 140-158;   Tracklist;   聴覚資料一覧
         1 ペダルの再生に様々な問題があったので、ペダリングが常に編集されたと考えられる
           ・ 同じ記録で、別々のコピーでペダルが異なった形に編集された事例:Saint-Saënsの交響曲作品55, Adagioの出だしの場合
             工場でコピーのマスターとして使われたロール  社長 Edwin Welte(Welte-Mignonの発明者の一人)が自宅に持っていたロール
             ただしこのような事例は極めて稀
         2 同様の理由により、バス音が確実にペダルに残るためにその鍵が指で保てるより長く保たれている場合がある
           ・ 10月28日ですでに一度リンクしたAdam BénardのSchubert-Lisztを注意して見れば事例が多く見られる。このような事例は全ての年代のWelteロールに多く見られる。
         3 音を出さずに押された鍵、ソステヌートペダルの効果を出す措置
           ・ Josef Hofmann演奏のWagner-Brassin(「ワルキューレ」よりFeuerzauber)の場合  (楽譜
             ワーグナーの原曲
             Josef HofmannがWelte-Mignonで記録した演奏(1905年9月)   mp3(フライブルクでゴチェフスキ再生)
             比較のため:同演奏者同曲の円盤録音(1923年)(ただしこの録音ではソステヌートペダルなどを使っていない)
           ・ Youra Güller (なたはGuller) のVivaldi-Bachの場合  mp3(1926年記録)  この授業の5月31日の資料も参照。
           ・ Vladimir HorowitzのSchubert-Liszt (Liebesbotschaft) の場合  mp3(1926年記録)  (楽譜
         4 鍵盤の上半分内、または下半分内に、同時に弾かれた音の強弱の差を出すダメの「非同期化」
           ・ Edwin Fischer の Beehoven, op. 10,3 第二楽章の場合 mp3(1909?年記録)   同、再現部  (楽譜
           ・ Bach-Vivaldiのフーガの場合 mp3(Youra Güller)    同年代と思われる Wera Schapira の録音
             (楽譜(同じ半分で主題が伴奏とぶっつかるところは赤丸、ぶっつからないところは緑丸)
         5 音の追加(古典曲の演奏では稀だが、いくつかのケースが存在する。主に初期のロールに発見される)
           ・ Xaver Scharwenka が演奏する Chopin op. 49 に見られる二つの手で絶対に引けない和音(p. 152
             普通の再生    ゆっくり再生されて    再現部にも同じような追加
           ・ Emil Paur が演奏する Beethoven op. 35 に見られる信じがたいバスのトリルp. 151
           ・ Georg Schumann が演奏する Beethoven op. 26 に見られる疑問のダブルオクターヴp. 150
         

    11月15日

  • ピアノロール/ロールピアノの時代(5):1905年に記録された4人のピアニストによるショパン・ノクターン作品15,2  (楽譜

  •      サン=サーンス(Camille Saens-Saëns, 1835-1921)の演奏(mp3)
         シャルヴェンカ(Xaver Scharwenka, 1850-1924)の演奏(mp3)
         プーニョ(Raoul Pugno, 1852-1914)の演奏(mp3)
         ブゾーニ(Ferruccio Busoni, 1866-1924)の演奏(mp3)
         Welte-Mignonの当時のパンフレットで並べられたこの4つ記録の冒頭部
         4つの録音の時間構造を分析したグラフ(Gottschewski著Die Interpretation als Kunstwerk, Laaber 1996より)
           ・ 授業で扱うグラフ(予定)
             Hauptgraphik1-Hauptgraphik4、21-22番
           比較のために聴くシリンダーと円盤レコード
           この曲の最初(?)の録音:Joseph Pizzarello(シリンダー録音、1898?、曲の一部省略)
           Raoul Pugnoの円盤レコード(1903年)
           Ferruccio Busoniの円盤レコード(1922年)
           Xaver Scharwenkaの円盤レコード様々(このノクターンが含まれていないが)

    11月29日

  • ピアノロール/ロールピアノの時代(6):続けて1905年に記録された4人のピアニストによるショパン・ノクターン作品15,2を扱う(前回のリンクを参照)

  •        ・ 四人のピアニストが楽譜をどこまで尊重するか
             (楽譜がいろいろとありますが、フランスのオリジナルエディッション(初版?)をベースにした。)
             サン=サーンスの場合
             シャルヴェンカの場合
             プーニョの場合
             ブゾーニの場合
             比較のためにKrystian Zimermanの録音
             ツィメルマンの場合

           ・ 授業で扱うグラフ(11月15日にリンクしたサイトから
             21-22番、8番、27番、31番、29番、24番、26番、9-10番、11-12番、15-16番、17-20番、32-36番



    12月13日

  • 演奏者による装飾音の問題:モーツァルトのピアノ協奏曲第26番 KV 537(「戴冠式」)の第二楽章を事例に(問題提起)

  •        授業資料 PDF (Microsoft Word)
           ・ 楽譜と文字文献
             モーツァルトの自筆譜
             (旧)モーツァルト全集による楽譜(1879年?)
             新モーツァルト全集による楽譜(1960年出版)第二楽章は47頁に始まる
               新モーツァルト全集の長大な序文はこの協奏曲の演奏史に多大な影響を与えたと考えられる。新モーツァルト全集オンラインから
               序文と編集報告にもアクセスできる。Serie V, vol. 78のVorspann, p. XIX 以下と Kritischer Bericht を参照。(ドイツ語のみ)
             Johann Nepomuk Hummel (1778–1837) によるアレンジメント(ピアノソロ、1836年以前)
             Carl Reinecke (1824–1910) によるアレンジメント(一部装飾付き、1870年代?)
             Carl Reinecke (1824–1910) 著『モーツァルトのピアノ協奏曲の復活について』(1990または1891, ドイツ語, KV 537 の第二楽章については37–44頁)

           ・ 録音資料(三文字の記号は録音比較表で使われているもの。比較表を開くにはユーザー名とパスワードが必要。授業で案内する。)
             Hum: Johann Nepomuk Hummelのアレンジメントによる演奏。ピアノは白神典子(Fumiko Shiraga, 2006年録音)。詳細はyoutubeまたはnaxosmusiclibraryを参照。
             Rei: Carl Reineckeの演奏(Welte-Mignonピアノロール、1905年録音)。youtubeを参照。
             Lan: Wanda Landowskaの演奏(1937年録音)。詳細はyoutubeを参照。
             Bac: Wilhelm Backhausの演奏(1941年録音)。詳細はyoutubeを参照。
             Cas: Robert Casadesusの演奏(1963年録音)。詳細はyoutubeを参照。
             GuS: Friedrich Gulda, スタジオ録音、1955年。詳細はyoutubeまたはnaxosmusiclibraryを参照。
             GuL: Friedrich Gulda, ライブ録音、1986年。詳細はyoutube(ビデオ)またはyoutube(オーディオのみ)を参照。
                   註 今度の比較対象にはなっていないが、1983のスタジオ録音もある。指揮はHarnoncourt。さらに1990年のライブ録音でこの2楽章をソロで弾いています。
             Bre: Alfred Brendelの演奏, スタジオ録音、1983年。詳細はyoutubeまたはnaxosmusiclibraryを参照。
             Bil: Malcolm Bilson (古楽器), スタジオ録音、1986年録音。詳細はyoutubeまたはnaxosmusiclibraryを参照。
             Sch: András Schiff, 1994年録音。詳細はyoutubeまたはnaxosmusiclibraryを参照。
             LeL: Robert Levin (古楽器), ライブ録音(ビデオ)、1997年録音。詳細はyoutubeを参照。
             LeS: Robert Levin (古楽器), スタジオ録音、1997年録音。詳細はyoutubeまたはnaxosmusiclibraryを参照。
             Bad: Paul Badura-Skoda, スタジオ録音、2001年録音。詳細はyoutubeを参照。
             Sof: Viviana Sofronitzki (古楽器), 録音は 2004〜2006年?詳細はyoutubeを参照。

                 各ピアニストの各部分の装飾音の有無の表




    リンク