音楽分析には長い伝統があるが、その伝統的な分析のほとんどが楽譜の分析である。楽譜が存在しない音楽を扱うこともあるが、その場合にはまず採 譜して、その後採譜したものを分析するので、分析は結局楽譜を対象としている。ただしその場合には分析の結果が採譜の方法にも左右されるのである。
しかし音楽には正確に採譜が出来ない要素もあり(例:テンポ変化、イントネーション、音色など)、それらが演奏の良さなどに決定的に働く場合も 多い。従っ て演奏の良さを説明するために採譜以外の方法でデータをとって、それを適切な方法で分析する必要がある。音楽の録音が可能になって以来、その分析も技術と ともに発展して来たが、音楽がパソコンで処理できる様になった最近二三十年間にはその可能性と方法も急激に増えた。この授業では音楽の時間論を中心に音楽 分析の根本的な問題から音楽研究の最前線をなす新しいメソドまで辿っていきたいと思う。対象となる音楽は(特に学生発表では)制限がないが、教員は19世 紀のピアノ音楽を中心にし、日本や韓国の伝統音楽のケースも取り上げたいと思う。