Hermann Gottschewski

2011年夏学期『比較芸術』「ベートーヴェンのピアノソナタとその周辺」

４月 21日

第７番のソナタ（作品10/3）：４楽章構成ソナタの一例

楽譜

初版: http://216.129.110.22/files/imglnks/usimg/4/43/IMSLP50957-PMLP106104-Op.10.pdf

Schenker版: http://216.129.110.22/files/imglnks/usimg/0/0c/IMSLP00007-Beethoven__L.v._-_Piano_Sonata_07.pdf

今日聴く録音　Vladimir Horowitz (1959)

http://www.youtube.com/watch?v=ottZM-wAmJs (第一楽章)

http://www.youtube.com/watch?v=ttc8pLpclJY (第二楽章)

http://www.youtube.com/watch?v=Ro62cCtixyQ (第三〜四楽章)

第一楽章提示部のモチーフ分析 (PDF-ファイル、ゴチェフスキ作成)

http://deutsch.c.u-tokyo.ac.jp/~Gottschewski/history/uu11/0421/ExpositionMotiv-Analyse.pdf

注：直接クリックしてファイルが正しく表示されない場合にはダウンロードして別のソフトで開いて下さい。

知識

先週配った資料でも分かる様に、「四楽章のソナタ」はベートーヴェンのソナタの中の一つの典型で、特に初期のソナタに多い。また、四楽章のソナタの多くではこのソナタと同様に楽章の種類は以下の様に組み合わされている。

第一楽章：早いテンポ、ソナタ形式

第二楽章：遅いテンポ、メロディーが中心、第一楽章と調が違う

第三楽章：舞曲、またはそれに似た種類、三部形式（ABA）、A部分が元の調、B部分は別の調

第四楽章：早いテンポで、元の調、ロンド形式が多い

この形式に従っているのは１〜３番（作品２）のすべて、４番（作品７）、７番（作品10/3）、11番（作品22）、15番（作品28）。それ以外四楽章構成のソナタには以下の違いが見られる。

12番（作品26）基本的に同じ構成だが、二楽章と三楽章が別の構成になっている。遅いテンポの楽章が第三に来ているのが後の作品にもよく見られる特徴

18番（作品31/3）遅いテンポの楽章がない、舞曲のB部分がA部分と同じ調。

13番と28番と29番（作品27/1と101と106）楽章の分かれ目が見えなくなるところがあるので楽章の数も数え方によって違う。遅い楽章、あるいは遅い導入部が終楽章の前に位置するのが特徴。

まとめると作品10/3で見られる「典型的な四楽章構成」ベートーヴェンの最初のピアノソナタにもっとも多く、作品26からはさまざまな変形が見られ、完全に典型に従う例は作品28が最後。また、作品31（18番）までは、四楽章構成ではないソナタが三楽章構成になっている。それ以後のソナタでは四楽章構成が珍しくなり、二楽章構成も多く見られる様になる。