東京大学 2024年度A-セメスター 水曜日2限目
   教員名:Hermann Gottschewski
   連絡先:gottschewskiアットfusehime.c.u-tokyo.ac.jp
   科目名:比較文化論II(2)
   テーマ:録音文化事始め:20世紀初頭のピアノロールを中心に

授業の目的

「最近」1000年間の西洋音楽文化を見渡せば、もっとも大きな変化の一つは録音の導入であった。その導入以前は音楽を記録する媒体は楽譜、音楽を実際に聴くのは生演奏とほとんど決まっていたが、録音可能な時代では過去に記録された音を再生して音楽を聴く場面が徐々に増え、今日では生演奏よりそちらの方が圧倒的に多くなっている。それとともに音楽の業界も大きく改変された。自分の演奏をスタジオ録音によって完璧な形で、あるいは演奏会におけるライブ録音として残すことができるようになった演奏者にも新しい可能性が生まれた。そして聴衆にとっても、同じ作品の多くの演奏を比較するなど、過去になかった音楽の聴き方が発展した。

この授業では録音がない時代から録音時代に変わる過渡期に一時的に大きな役割を果たしたピアノロール(特に1904年から人の演奏を再生できるようになったヴェルテ・ミニョンの「再現ピアノReproduktionsklavier」)の文化的な役割に注目したい。そこで特に話題にしたいのは(1)「作品」として成立する演奏解釈、(2)ピアノロールの史料的価値、そしてそれに対しての史料批判、(3)同時に発展するレコード文化との相互作用と(4)「トーンマイスター」という、他人の演奏を編集する新しい職業がピアノロールの世界でどのように成立したか、というテーマである。



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