2004年度 比較文学比較文化演習II
講義題目:演奏の比較研究
現在の国際的な音楽文化ではプロフェッショナルな演奏者が多くの人気を集めている。そのマーケットと経済力も大きいし、音楽評論の大部分は演奏に関わるものである。最近の音楽研究では演奏を対象とするものが増えて来たが、演奏の実際の重要性を考えれば、演奏研究は他の音楽研究の分野に比べてまだまだ未開発の様に見える。それは方法論の問題でもある。例えば「演奏比較」は趣味誌などでよくなされるが、それは学術的な方法によるのではなく、ただ記者の趣味や知識に従って主観的に書いたものである。心理学あるいは音楽心理学では音楽のパフォーマンスをテーマとしたシステマチックな研究は少なくないが、そのほとんどは音楽をする人間の様々な細かい機能の研究で、芸術の一種である演奏の研究ではない。
学術的な演奏研究の資料としては教則本、楽譜、評論、書簡等、理論書、ライブ録音、スタジオ録音、インタビュー、実験データなどがある。「比較」の対象になるのは例えば演奏の態度(演奏する場所によって異なるものなど)、演奏のスタイル(時代によって異なるものなど)、演奏された曲の解釈(演奏者によって異なるものなど)、ライブ演奏の自由性(音楽文化によって異なるものなど)、音以外の場面の役割(音楽のジャンルによって異なるものなど)である。
この授業の目的は
- 「演奏」という概念の定義
- 従来の比較演奏研究方法を知ること
- その方法の分類、可能性、問題点を議論すること
- 新しい方法の開発
であるが、具体的な進行と授業の対象になる音楽ジャンルなどは参加者の興味によって定める。
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